なんでも良しとしとくれよ。

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境界線

どこか居心地の悪さを感じながら体の重心をふらふらと変えて俯いたままスマホを見ていた。

電車の乗り換え時間を執拗に確認してから顔を上げると、窓の外遠くに観覧車が見えた。

ライトアップされた観覧車は小さく見えていても存在感を強く放ち、私は5秒も見つめずにまたすぐ下を向いた。今度はスマホを見ずに腕を組んで目をつむった。

好きな人と観覧車に乗ったことはない。でも観覧車の中は静かで時間がゆったりと進むことを私は知っている。乗るものじゃなく、眺めるものだとも思う。

 

私は火を見ていると落ち着く。灯りではなく、炎であることが大切だ。

都会のきらめきは本当に宝石に近しいものがあると思う。宝石は細かくチラチラと光り輝き、当たる陽の光加減やカットの仕方で表情を変える。ブリリアントカットよりペンタゴンカットの方が好き。そんな程度の話だけれど、街の明かりにも表情はある。無機質とは言えないが、自然に勝るものはないのかもしれない。

小さな音と共にこぼれ揺蕩う火の粉が地面に落ちていく様と炎の揺らめきは、見つめると眠たくなっていく。どんな事でも忘れられる気持ちになる。誰を好きで、誰を許せなくて、誰が苦手で、誰を常に意識していても、許してもらえる気持ちになる。

こんなにたくさんの人と物が溢れている場所で、私はひとり出歩き、喉から手が出る程欲しいものも1つもない。たった1つも。強いて言えば、と思い浮かべようとして、お金で買えないものなのでやめた。

ラインを引く。大切だと思う。貰った腕時計を見て時間を確認した。私の中に、入れる人は、今はいない。